おいしいお茶をいただくために
岩鋳の伝統工芸士がつくる鉄瓶は、外側には天然うるしの焼付塗装をほどこし、内側には伝統技法の釜焼仕上げで酸化被膜をつくっています。この皮膜はサビ止めになり、湯の中には身体が吸収しやすい二価鉄を多く含んだ鉄分が溶け出します。使い初めのころには内側に赤い斑点などの模様が出ることがありますが、これは鉄瓶がまだ若い証拠。お湯を沸かして使ううちに、水道水のカルキで内側が白くなっていきます。毎日使えば、早ければ1年から1年半ほどで白い湯あかがついてきます。お茶の味をまろやかにするのはもちろんですが、割り水に使うとお酒が甘くなると話すお客さまも。白い湯あかがつくまで鉄瓶を育て上げたら、まずは白湯でお試しを。味の違いにきっと驚くはずです。
慣れ親しんだ湯の味をいつまでも
結婚して家を離れるお嬢さまに、家族で長年愛用していた南部鉄瓶を嫁入り道具としてもたせたというご夫婦がいらっしゃいました。嫁ぎ先でも小さい頃から慣れ親しんだ鉄瓶で美味しいお茶を飲んでほしいという親の思いが伝わってくるようです。このように鉄瓶は、世代を超えて受け継がれていく財産にもなりうる道具です。